かぐや姫の物語





かぐや姫の物語

日本
アニメーション
2013/11/23 公開
上映時間 137分
オススメ度 ★★★★   最高8つ星



      「完璧じゃない完璧なアニメーション」


 久々に更新するのタイムリーな映画「かぐや姫の物語」の感想を書いてみようと思います。
 「ホーホケキョとなりの山田くん」以来の高畑勲監督が手がけるジブリ作品ということで、何かと話題性の高い作品です。
作品のプロローグ映像でもすごい形相で疾走するかぐや姫が話題になりました。
僕もこのプロローグ映像を観てこの作品に興味が湧き公開初日に観に行った次第です。
 さて、僕が最近の映画でもかなり期待度が高かったこの作品を鑑賞した感想は… そこそこ面白かったです。
可もなく不可もなし… うーん… 期待しすぎた感はあったような気がする…
プロローグで持った印象と本編で持った印象は全く違ったもので、もっとかぐや姫の原作なんか無視した作品かと勝手に解釈してしまっていました。
 この「かぐや姫の物語」は原作にかなり忠実に再現されており、その原作では語られていない理由や心情を付けた作品となっています。実に1000年近く前に作られた原作をいかに現代の作画や演出で映えさせるかを意識したような作りだったと思います。公開前から良かった評判通り作画などに関してはとても良かったです。
何かの記事で「アニメーターが描いた画をそのまま違和感なく動かすことが出来た」と監督がインタビューに答えてるのを見ましたが、確かに線画で素朴かつやさしく描かれているのに動きはすごく滑らかでした。 文面では何とも表現しづらいですが、すごく作り込んだ「まんが 日本昔話」のような感じだなと観ていて思いました。 詳しくないのでよく知りませんがw
 作画が上手い、丁寧というよりキレイというほうがしっくりくると思います。観ていて頭身が急に変わったりする箇所もあったり、くちゃくちゃになる箇所もありました。それはあえてなのかは定かではありませんが…
高畑勲監督が「商業的に成功しなくてもアニメーションの表現上では成功したと思う」と打ち上げパーティで言ったと本で見ましたが、何となくその意味は分かったような気がします。
 内容は序盤に書いたとおり原作に細かい心情を加えています。 個人的にこの心情付けにはあまり良い印象は持ちませんでした。日本では昔から親しまれ、学校の国語の授業でも勉強する「竹取物語」に心情を付けてもそれは十分に予想出来る範囲であって、実際観ていても感心するようなことはありませんでした。 誰が観ても「かぐや姫はこんなこと考えてたんだ!!」と思う人はまずいないと思います。
 映画のメインテーマでもある「姫の犯した罪と罰」この「罪と罰」というものがいかんせんクセモノ感を出していますw
「罪と罰」というものは原作の「竹取物語」にも存在しており ”姫は何か罪を犯し罰として地球に送られた” ということは分かっていますが原作では具体的な「罪」の部分が書かれていません。
ジブリの「かぐや姫」はそこに注目したんですね… そんなジブリ版の「罪」とは何なのか… ネタバレですが書いちゃいますw
「罪」とは "地球に興味を持つこと" …それだけ? な気もしますが…
劇中の月の住人にとって地球は汚らわしいモノと認識されているようで、地球に興味を持つ何ぞ言語道断、そんなやつは地球に島流しだ!!という感じのようです。
しかし、そこの理由付けはされているものの、月の住人が何故地球をそう捉えているのかという理由は語られていません…
モヤっと感があります… そして「罪」を犯したかぐや姫の「罰」である地球への島流し
この「罰」もイマイチピンとこないものがあります。 それは劇中かぐや姫は自然を愛するおてんばな女の子として描かれ、成長しお金持ちになり良い暮らしをするようになるとその堅苦しさ、自由になれない歯痒さからつらい思いをするという描写がありますが、このキッカケも元々は月からの金や着物が送られたからなわけで…
竹から金が出るようになりしまいには上等な着物まで竹から出てくりゃ、立派な姫にしようと誰だって思うでしょう…
月の自作自演感が半端じゃないです。 結局「罪と罰」というのは曖昧なままなわけですね…
 ダラダラと思ったことを書いてますが、登場人物の簡単な説明を入れておきたいと思います。
 原作を知ってる前提で書いてたわけですが、これ知っちゃえばある程度は内容把握が出来ちゃうと思います。

かぐや姫
・おてんばな女の子 3ヶ月で大人になったその成長ぶりからみんなからタケノコと呼ばれる
爺のはからいでお姫様になるが内心不満に思う。その美しさから様々な男に求婚されるがことごとく振る。男共の哀れな末路や帝の強引な振る舞いから地球にチョット嫌気がさしちゃう


・かぐや姫の父代わり 姫が月に帰るキッカケを作った人@
竹から授かった姫、金、着物などから姫を立派にしようと奮迅する。姫に対する愛からの行動だが、姫の考えを無視したその行動は空回りし姫とはすれ違いが生じる。ある意味月に1番踊らされた人物か…


・かぐや姫の母代わり 姫の良き理解者
かぐや姫が家に着てからお乳が出るようになる… ( ゜д゜) …

捨丸
・ジブリ版のオリジナルキャラ 村の子供達のお兄さん的存在、かぐや姫とはいい感じの仲だった。
所帯持ちのクセに大人になったかぐや姫に一緒に逃げようと言う。よく分からん

相模(さがみ)
・オリジナルキャラ
姫を立派にするべく爺が雇った教育係、公家娘のしきたりを嫌がり言うことを聞かないかぐや姫にてんてこ舞い

求婚してくる5人
・原作と同じ


・汚れ役
かぐや姫が月に帰るキッカケを作った人A
原作ではそこそこかぐや姫といい感じの仲だったのに映画では全くそんな事はない
アゴと服… 何かのジョークか?…

女童
・かぐや姫のお手伝いさん
かわいい

月の使者
・どう見てもお釈迦様
宇宙人なんだか天界の人なんだかハッキリし てほしい

 あまり関係ありませんが帝のアゴについて書かせてもらいます。
観た人は分かると思いますがめっちゃ尖んがってます… 帝でアゴが尖ってるって… もう狙ってるとしか思えない…
何故狙ってると思ったか説明させてもらうと昔の天皇家は近親婚を代々行なってきたという説があります。
別に昔の日本では比較的タブーではなかったらしいですが…
そして、一般的に近親婚は身体の弱い子、障害のある子が産まれてくることが多いとも言われています。
正確には近親交配で変な子が生まれるということはありません。 ただし、近親交配で産まれた子供の場合"劣性遺伝"を受け継ぐ可能性がかなり高くなるというデータがあるようです。
劣性遺伝は別に劣ったものというわけではなく、子孫に受け継がれにくい遺伝子というものです。
逆に受け継ぎやすいのは"優性遺伝"と言います。一概には言えませんが先天的な病気は劣性遺伝子を持っていることが多く、そのため近親交配をすると病気の子供が生まれてくると言われています。
ここまでくれば分かると思いますが、"アゴが尖る"という特徴は劣性遺伝です。
ある意味1000年前の帝を表現するにはうってつけなのかもしれませんが… これはどうかと…
制作側はどんな意図だったのか気になります。 変に勘ぐったのは僕だけじゃないはず…
 ちなみにあくまで昔の日本は近親婚が比較的多かったというだけで、天皇が近親婚ばかりだったわけではありません。逆にそんな情報はあまり無いです。近親婚というものはタブー視されてる分、それが数回行われただけで目についてしまうだけです。ゴキブリを部屋で1日2匹見たらもうゴキブリ屋敷にしか感じないと同じですね。
 月の使者のデザインについてはちょっと書きましたが明らかに仏陀です。
原作では天人と書かれているように月というものは天界のことでそこに住むのは地球でいうところの神様が住んでいるということなんでしょう。 正直ここは変えて欲しかったです。
結局のところ「かぐや姫」は何なのか?ということになってしまいます。
人なのか?宇宙人なのか?神様なのか?この答えも作って欲しかったです。
 思ったことを書いてるうちに意味わからん文書になりましたが、

総評して
・画は良い
・内容ほぼ原作通り
・さして心震わせる描写は無い
・長すぎ
・オリジナルキャラが冴えない
・予告は上手く作ったなと感じた


 中身ではなく、画やアニメーションの素晴らしさを楽しんだほうが良いということですね。
画の好みというのは人によって違いますから、僕にはさして響かなかっただけで感動する人はたくさんいると思います。
多分長い期間公開していると思うので気になった人は是非観にいってみてください。




※管理人が独断と偏見で書いたものです。作品内容、本質が著しく違う恐れがありますがご了承くださいm(_ _)m






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